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定年退職後の再雇用と賃金引き下げをめぐり、「正社員と契約社員で職務内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に違反する」との判決が2016年5月13日、東京地裁で出ました。
原告側弁護団によると、再雇用時の賃金引き下げを法律違反と認める判決は初めてとのことです。

 

原告は、横浜市内の運送会社で定年退職後、嘱託社員として再雇用されたトラック運転手3人。
正社員の時と業務内容が変わらないのに賃金が約3割引き下げられたのは違法だとして、
定年前と同じ賃金を払うよう会社に求める訴訟を起こしていました。

 

判決は「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と指摘。
この会社については「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、特段の事情はなかったと判断しました。

 

コストを抑制しつつ定年後の雇用確保のために賃下げをすること自体には「合理性はある」と認めつつ、
業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はないと指摘。
「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」と述べました。

 

13年4月に施行された改正労働契約法20条では、有期雇用社員と正社員との間で、賃金や労働条件に不合理な格差をつけることを禁じています。しかし実際には、企業側が定年を迎えた社員を契約社員として、賃金を引き下げて再雇用することが一般化しています。

 

今後控訴した場合、判決が変わる可能性はありますが、高齢社員の再雇用についての考え方が根本的に変わることになり、今回の判決が雇用機会の減少につながる可能性もあるため、企業側は対応に追われることになるかもしれません。

 

担当:TK

2016.05.19